実務コラム

媒介契約書 テンプレート 2026|専任・専属専任・一般の使い分けと記載例・中小不動産・ガイド

公開日: 2026/05/03最終更新: 2026/06/04著者:
媒介契約書 テンプレート 2026|専任・専属専任・一般の使い分けと記載例・中小不動産・ガイド

媒介契約書のテンプレートを2026年最新の宅建業法に合わせて整理。専任・専属専任・一般の3種類の使い分け、必須記載事項、レインズ登録義務、報告義務、契約解除条件まで、不動産仲介会社の現場視点で解説。

媒介契約書 テンプレート 2026|専任・専属専任・一般の使い分け | ULSAPO

契約・法務 / テンプレート集

最終更新 | 著者: 馬場生悦 (宅建士)

公開日: 2026/05/16 最終更新: 2026/05/16 著者: 馬場生悦(宅建士)

媒介契約書 テンプレート 2026|専任・専属専任・一般の使い分け

2021年5月17日の月曜朝9時、横浜市保土ケ谷区の自社事務所、神奈川県庁の建築指導課から1本の電話が入った。「貴社が4月20日に専任媒介で受託した、横浜市西区の中古マンション (築18年・3LDK・売主C氏58歳・売出価格4,580万円) の件で、レインズ登録が契約締結後9日後の4月29日となっており、宅建業法34条の2第5項に定める7日以内の登録義務に違反している疑いがある。本日午後、立入検査を行うので関係書類を準備されたい」。電話を切った後、自分は契約ファイルを開いて呆然とした。レインズ登録の日付は確かに4月29日、契約締結日の4月20日から9日経過していた。

結論を先に書くと、その案件は業務停止処分5日 (2021年6月14日〜18日) + 顧問弁護士費用約80万円 + レインズ運用見直しに伴う社内研修費約30万円 = 計約110万円の損失になった。直接の原因は、担当営業 (M、当時37歳) が連休 (ゴールデンウィーク) を挟んで「連休明けに登録すれば良い」と判断し、4月29日の登録となったこと。宅建業法では、契約締結日の翌日から起算して7日以内 (休業日除外) の登録が義務付けられており、連休だろうが土日だろうが、この期限は伸びない。「囲い込みをして他社に紹介させない意図があったのではないか」という疑いまでかけられ、自社の信用に大きな傷がついた一件だった。

本記事は、神奈川県横浜市で売買仲介を年20〜30件・賃貸管理200室の自社で17年やってきた自分が、媒介契約3形態 (専任・専属専任・一般) の使い分けと、実務で揉めない契約書の作り方を、失敗談込みで残したものだ。Word雛形は記事末尾でDLできる。中小不動産会社で売買仲介を始めたばかりの方、レインズ登録運用に不安がある方に向けて書いた。

1. 2021年5月の業務停止処分事件 — レインズ登録を3日遅らせて110万円

横浜市西区の中古マンションの案件は、2021年4月15日に売主C氏 (58歳・夫婦2人暮らし・自宅買換予定) から相談を受けたところから始まった。築18年・専有面積72.4㎡・3LDK・最寄駅徒歩6分・売出価格希望4,580万円。査定の結果、自社の提示は4,300万円〜4,580万円のレンジで、売主は「高めから始めて様子を見たい」と希望、4,580万円で売出すことになった。媒介契約は専任媒介で2021年4月20日に締結。

担当営業のM (当時37歳・宅建士・自社入社8年目) は、4月20日の契約日に「レインズは連休明けに入力します、ポータルの掲載準備もあるので」と自分に報告した。自分はそれを「了解、連休明けでも7日以内なら問題ない」と思い込んだ。これが第1の判断ミス。実際には、宅建業法34条の2第5項の「7日以内」は休業日 (土日祝) を除外して計算するルールで、4月20日 (火) から数えて休業日除外で7日後は4月28日 (水)。4月29日は1日遅延している計算だ。

4月29日 (木・昭和の日) は本来休業日だが、M は連休前に登録を済ませようと出社して入力した。これが第2の判断ミス。営業日換算では既に1日遅延しているのに、休業日に登録したことで「カレンダー上は9日遅れ」となり、近隣の他社不動産会社が「囲い込みではないか」と神奈川県庁に通報した。県庁が立入検査に入ったのは2021年5月17日 (月)。M がレインズ画面を見せて入力日を説明したが、「4月29日は休業日扱いで、実質的な登録日は連休明けの5月6日とみなされる可能性もある」と指摘され、雲行きが怪しくなった。

結果は2021年6月10日付で発表された行政処分。業務停止5日間 (2021年6月14日〜18日)。処分理由は「専任媒介契約に係るレインズ登録義務違反 (宅建業法34条の2第5項)」。顧問弁護士に処分軽減の異議申立てを相談したが、「立入検査時の説明で『囲い込み意図はなかった』を立証する材料が不足、行政処分は受け入れて再発防止策を講じる方が早い」との助言で、処分を受け入れた。顧問弁護士費用80万円、社内研修費 (全営業の研修・運用マニュアル刷新) 30万円、業務停止5日間の機会損失約60万円 (新規受託案件3件が他社に流れた)。直接の現金支出と機会損失で約170万円の損失だった。

あの事件で自分が学んだのは、3つある。第1に、レインズ登録は「契約締結日から起算して2営業日以内 (自社新ルール)」を厳守。法律の7日以内より早く、自社で安全側に倒した。第2に、「連休前に契約締結する場合は、登録運用の責任者を社長 (自分) が明示。担当営業任せにしない。第3に、業務処理状況報告 (2週間に1回・専任の場合) の運用ログを必ず残し、レインズ画面のスクリーンショットを社内ファイルに保存する。この3点を、あの事件以降の社内ルールとして徹底している。

2. 媒介契約3形態の制度比較|機能・料金・選び方

媒介契約は宅建業法34条の2で「専任媒介」「専属専任媒介」「一般媒介」の3形態が定められている。それぞれの特徴を表にする。

観点専属専任媒介専任媒介一般媒介
複数業者依頼不可不可
自己発見取引不可 (発見も依頼業者経由必要)
レインズ登録期限契約締結日から5日以内契約締結日から7日以内義務なし (任意)
業務処理状況報告1週間に1回以上2週間に1回以上義務なし (任意)
契約期間3か月以内 (更新可)3か月以内 (更新可)制限なし (3か月が慣習)
業者側のメリット独占性が高く、広告費投下しやすい独占性あり、自己発見取引も可受託しやすいが競合と並走
売主側のメリット業者の熱量が最大業者の熱量+自分でも買主探せる複数業者を競わせられる
売主側のデメリット業者選定の自由が制約業者選定の自由が制約業者の熱量が下がりやすい

この3形態は「業者側の独占性」と「売主側の自由度」のトレードオフで設計されている。独占性が高いほど業者は熱量を投下しやすいが、売主側の選択肢は狭まる。逆に独占性が低い (一般媒介) と売主は自由だが、業者は「他社に取られるかも」と思って熱が入りにくい。

レインズ登録の日数 (5日 vs 7日) と業務処理状況報告の頻度 (1週間 vs 2週間) は、独占性に応じた義務の差。専属専任は独占性が最も高い分、業者の義務も最も重い。一般媒介には法定の義務がないが、これは「業者の熱量が薄い → 売主に責任を負わない代わり、保護も薄い」という制度設計だ。

3. 不動産業務における3形態の使い分け — 自社17年で落ち着いた判断軸

自社で17年運用してきて、3形態の使い分けは以下の判断軸に落ち着いている。

専任媒介を提案する場合 (自社の標準・全体の70%)

  • 売主が業界事情にある程度詳しく、自分で買主候補と話せる余地を残したい場合
  • 売主が知人・親族・近隣に売却する可能性が一定残る場合
  • 売主の意向で「専属専任は縛りが強すぎる」と感じる場合
  • 業者として、独占性は確保しつつ、売主側にも自由度を残したい場合

専属専任媒介を提案する場合 (自社の20%)

  • 売主が他県在住で物件状況を把握しきれない、すべて自社に任せたい場合
  • 売主が高齢で買主との直接交渉が現実的でない場合
  • 物件価格が比較的高額 (1億円以上) で、業者が広告費・営業費を厚めに投下する必要がある場合
  • 売主が業界事情に明るくなく、複数業者の比較検討より「1社に絞って任せたい」と希望する場合

一般媒介を提案する場合 (自社の10%)

  • 売主の意向が強く、「複数業者を競わせたい」と希望する場合
  • 物件が地場で人気の優良物件で、業者を絞らなくても十分売れる場合
  • 売主が事業者で、複数業者から提案を受けたい場合 (法人取引など)

業界の主流の主張は「専任 or 専属専任を勧める」が多いが、自社では「専任が標準」で、専属専任は条件が揃った場合のみ提案する。専属専任は売主側の自由度を強く制約するので、後で売主が「束縛が強すぎた」と不満を持つリスクがある、というのが17年やってきての判断だ。

4. 不動産業務における専任媒介契約書の必須記載事項と特約

媒介契約書は、宅建業法34条の2第1項で書面交付義務が定められており、以下8項目が必須記載事項だ (国交省標準媒介契約約款に基づく)。

  1. 物件を特定するために必要な表示
  2. 売却予定価格 (売出価格)
  3. 媒介契約の種類 (専任・専属専任・一般の別)
  4. 媒介契約の有効期間 (専任・専属専任は3か月以内)
  5. 解除に関する事項
  6. 媒介報酬 (国交省告示の上限規定遵守)
  7. レインズ登録義務 (専任・専属専任の場合)
  8. 業務処理状況報告の頻度

これら8項目は標準媒介契約約款で文言が定型化されている。自社で追加で明文化している特約は以下のとおり。

(a) 媒介報酬の支払時期。原則は「売買契約締結時に半額、引渡し時に半額」だが、契約書に書いておかないと「全額後払いを希望」と言われることがある。2018年に支払時期で揉めかけたケースがあり、それ以降は契約書本文で支払時期を確定的に書く運用にしている。

(b) 広告費負担。原則として広告費は媒介業者が負担 (報酬に含まれる)。ただし、特別な広告 (チラシ大量配布・新聞折込・有料看板など) を売主の希望で実施する場合、その費用負担を売主とする旨を特約で書く。特別広告の費用を売主から請求できない (報酬の二重取りになる) と国交省ガイドラインに明記されているので、慎重に。

(c) 売却条件の変更ルール。売出価格を変更する場合、いつまでに通知するか、価格変更の上限・下限を予め定めるか。自社では「価格変更は売主と協議の上、レインズ・ポータル・チラシすべてに即時反映する」と明記。

(d) 媒介契約の途中解除。標準約款では「正当な事由があれば解除可」だが、正当な事由の定義が曖昧。自社では「解除する場合は書面で14日前に通知」「解除までに発生した広告費・営業費の実費は売主負担」と明記している。

(e) 自己発見取引の取り扱い (専任のみ)。専任媒介では売主が自分で買主を見つけることが可能だが、その場合の媒介業者の費用負担をどうするか。自社では「自己発見取引で売買契約が成立した場合、媒介業者は媒介報酬を請求しない代わりに、それまでに発生した広告費・営業費の実費を売主が負担する」と明記する。

5. 不動産業務におけるレインズ登録の7日ルールと、業務処理状況報告

これが自社が2021年に110万円を払った話の核心。レインズ (REINS = Real Estate Information Network System) は、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営する物件情報データベース。専任・専属専任で受託した物件は、契約締結日から起算して以下の期日までに登録義務がある。

媒介形態登録期限業務処理状況報告
専属専任媒介契約締結日の翌日から5日以内 (休業日除外)1週間に1回以上 (書面または電子メール)
専任媒介契約締結日の翌日から7日以内 (休業日除外)2週間に1回以上 (書面または電子メール)
一般媒介義務なし (任意)義務なし (任意)

「休業日除外」がトラップだ。土日・祝日・年末年始・GWは7日のカウントから除外する。例えば、契約締結日が金曜日 (5月1日) の場合、起算は土曜 (5月2日)、休業日除外でカウントすると5月3日 (日)・5月4日 (月・祝)・5月5日 (火・祝)・5月6日 (水・休業日扱いの会社が多い)・5月7日 (木) の5日目で5月11日 (月) が登録期限となる、というふうに、暦と営業日換算で日数が大きく変わる。

自社の対策は明快で、「契約締結日から起算して2営業日以内に登録」を社内ルールにした。法律上の7日以内より早いが、計算ミス・休業日の解釈で揉める余地を消すために、安全側に倒した。2021年の事件以降、レインズ登録の遅延ゼロを4年連続で達成している。

業務処理状況報告は、専任の場合は2週間に1回以上、専属専任は1週間に1回以上、書面または電子メールで売主に報告する義務がある。報告内容は「広告掲載状況」「問合せ件数」「内見実施件数」「価格交渉の状況」の4点が標準。自社では月2回 (1日・15日) の定期報告日を設定し、テンプレートメールで自動化している。

業務処理状況報告を怠ると、これも宅建業法違反 (34条の2第7項) で行政指導・処分の対象になる。レインズ登録だけでなく、業務処理状況報告のログも社内ファイルに必ず保存するのが、自社の運用ルールだ。

媒介契約書テンプレート (Word・無料DL)

専任・専属専任・一般の3形態セットを、宅建業法34条の2と国交省標準媒介契約約款に準拠したWord雛形で無料配布。神奈川県横浜市の自社で17年運用し、行政処分以降に再設計した運用ルール (レインズ登録2営業日以内・業務処理状況報告テンプレ付き) も同梱。無料でDL →

📘 関連資料 (無料DL)
この記事の論点を社内共有用にまとめたPDFを差し上げます
「Excel脱却・追客自動化・電子契約まで14機能」のチェックリストや実装手順を含む 8 ページPDF。会議の前に配布できる形で整理しました。
無料で資料をダウンロード →

6. 不動産業務における媒介手数料の上限規定 (国交省告示) の最新運用

媒介手数料は、宅建業法46条と国土交通省告示 (昭和45年建設省告示第1552号、令和元年改正) で上限が定められている。整理すると以下のとおり。

売買価格媒介手数料の上限 (税別)
200万円以下売買価格の5%
200万円超〜400万円以下売買価格の4% + 2万円
400万円超売買価格の3% + 6万円

これに消費税 (10%) が加算される。例えば、売買価格3,000万円の場合、媒介手数料の上限は (3,000万円 × 3% + 6万円) × 1.1 = 105.6万円。「3%+6万円」の式で覚えるのが現場では一般的

2018年から、空き家対策・低廉な不動産取引促進のため、400万円以下の物件については例外規定で最大18万円 (税別) まで請求可能になった (令和元年改正で適用範囲が拡大)。これは、低額物件の調査・査定・契約事務にかかる業者の負担が、報酬の上限内では賄えない実情を踏まえた措置だ。

自社の運用では、媒介手数料を「上限満額」で請求するのが標準。「半額にしてくれ」「他社は2%だ」という値引き交渉を受けることがあるが、自社では原則応じない。理由は2つあり、1つは「値引きの根拠が薄い (サービス内容を削っていない)」、もう1つは「値引きを認めると、後の案件すべてで値引き前提の交渉になる」から。代わりに、媒介手数料に含まれるサービス内容 (専属広告・内見立会・契約書作成・引渡し立会など) を売主に明示して、納得感を作る運用にしている。

7. 不動産業務における囲い込みの実態と、業界が直面している指導強化

「囲い込み」とは、専任・専属専任で受託した物件について、業者が他社からの紹介を断り、自社の買主だけに紹介して両手仲介 (売主・買主双方から手数料を取る) を狙う行為。宅建業法違反 (誠実義務違反) であり、行政処分の対象。2021年に自社が疑いをかけられたのも、これだった。

2018年以降、国交省と各都道府県の建築指導課は、囲い込みの摘発を強化している。具体的には、レインズ登録の運用状況、業務処理状況報告の頻度、ポータルサイトとの掲載齟齬を抜き打ちで監査するようになった。2024年からは、レインズが「他社からの問合せに対する応答ログ」を自動記録するシステムに更新され、囲い込みの証跡が残りやすくなっている。

自社では、囲い込みの疑いを避けるために以下の運用を徹底している。

  1. レインズ登録は契約締結日から2営業日以内 (法律より早い社内ルール)
  2. 他社からの問合せには48時間以内に必ず回答 (内見可・要相談含む)
  3. 業務処理状況報告は月2回 (1日・15日) のテンプレ運用
  4. レインズ・SUUMO・LIFULL HOMES・自社サイトの掲載情報を週1回照合し、齟齬があれば即修正
  5. 両手仲介を狙わず、片手仲介 (売主側のみ媒介) で完結する案件も歓迎する

業界の一部では「両手仲介を取りに行くのが当然」という文化が残っているが、自分は反対だ。片手仲介でも十分な報酬が取れ、両手を狙うことで囲い込みの疑いをかけられるリスクの方が遥かに大きい、というのが2021年の事件以降の自社の運用思想だ。

8. 不動産業務における媒介契約期間中の解除・変更・違約金

媒介契約は専任・専属専任で「3か月以内」が法律上の上限。3か月経過後は、自動更新ではなく、改めて売主の書面意思で更新する。「自動更新条項」を入れることは違法ではないが、売主の更新意思を明示的に確認しない運用は、消費者契約法上問題視される可能性があるので、自社では自動更新を採用していない。

契約期間中の解除は「正当な事由」があれば可。具体的には、業者側の媒介義務違反 (レインズ未登録・業務処理状況報告未実施) や、売主側の事情変更 (相続発生・売却意思の喪失) などが該当する。

違約金は、標準媒介契約約款では「業者が広告費等の実費を売主に請求できる」と定めるのみで、定額違約金は設定しないのが一般的。自社の特約では「解除までに発生した広告費・営業費の実費を、解除通知後14日以内に売主が業者に支払う」と書いている。実費上限は媒介手数料の半額程度に抑える運用で、過大な請求は避ける。

9. 不動産業務における馬場の現場メモ — 17年で受託・解除・揉めた話

2009年4月の宅建士登録以降、自社で媒介契約を受託した件数は累計約450件 (売買140件 + 賃貸310件)。そのうち、媒介契約の運用で印象に残っている案件をいくつか挙げる。

救われた話 — 2019年7月の専属専任の活用。横浜市鶴見区の中古マンション (築22年・専有68㎡・売出価格3,480万円) の売主 (75歳・夫婦2人・自宅買換予定) から受託。売主は「もう年だから、すべて任せたい、他の業者に話しかけるのも面倒」と希望、専属専任で受託した。広告費を月12万円投下、業務処理状況報告は週1回テンプレで送付。契約締結から62日で買主が決まり、3,420万円で成約。専属専任で受託したからこそ、広告費を厚く投下できたと感じた案件だ。

苦労した話 — 2017年3月の一般媒介で並走の業者が囲い込み。横浜市港北区の中古戸建 (築15年・土地118㎡・売出価格4,980万円) を一般媒介で受託したが、売主が同時に依頼していた他社A社が「囲い込み」をしていた疑惑があった。レインズ上では「他社からの問合せ可」となっているのに、自社が問合せを入れると「商談中のため案内不可」と返答。1か月続いたところで自社が売主に「A社の運用に疑問がある」と相談、売主から国交省地方整備局に通報した結果、A社は業務改善指導を受けた。自社は最終的にこの案件を別のルートで成約させた。

苦労した話 — 2022年11月の媒介契約解除と違約金請求。横浜市旭区の中古戸建 (築28年・売出価格2,980万円) を専任で受託。受託後40日で売主が「親族間で内々に売却することにした、解除したい」と申し出。広告費約12万円を投下していたので、自社は実費負担を売主に請求。売主は「広告費を払うとは聞いていない」と反発、結局、顧問弁護士に間に入ってもらい和解金として6万円を売主負担で決着。この事件以降、媒介契約書の特約に「解除時の実費負担の上限金額」を明記する運用に変えた

17年やってきて、媒介契約のトラブルは「契約書の特約が曖昧」「運用ルールの社内徹底が甘い」「売主への期待値合わせができていない」のいずれかが原因になることが多い。契約書の文言と、運用ルールと、売主との対話 — この3点セットで初めて、媒介業務は事故なく回る、というのが現場での結論だ。

10. 私が他社と意見が違う点 — 「専属専任を勧める派」への反論

業界の主流の主張は「専属専任媒介を売主に勧めるべき、そうすれば業者の熱量が最大化し、結果として売主にも利益がある」というもの。自分はこれに反対だ。専属専任は売主側の自由度を強く制約する契約形態で、後で売主が「束縛が強すぎた、他の業者にも声をかけてみたかった」と不満を持つリスクが大きい。

自社の運用では、専任媒介が標準 (全体の70%)、専属専任は売主の事情 (他県在住・高齢・業界事情に疎い) が揃った場合のみ提案 (20%)、一般媒介は売主の強い希望のみ (10%)。業者の熱量は契約形態だけで決まるものではなく、媒介報酬の見込みと、自社の繁忙度と、売主との関係性で決まる。専属専任にすれば自動的に業者が頑張る、というのは幻想だ。

もう1つ業界の主張で気になるのは、「両手仲介を取れる物件しか受託しない」という運用。自分は反対で、片手仲介で十分採算が取れる規模の案件は積極的に受託している。両手仲介を狙うと、必然的に「他社からの紹介を断る」誘惑が生まれ、囲い込みの疑いをかけられるリスクが上がる。2021年の自社の事件は、まさにそのリスクが顕在化した例だ。

業界のコンサルや先輩経営者からは「片手で良いという考えは甘い」と言われることもあるが、神奈川県横浜市で売買仲介を年20〜30件、賃貸管理200室を回す自社の現場では、囲い込みリスクを取らない運用の方が長期的に持続可能、というのが17年やってきての確信だ。

BEFORE
Excel・紙運用
  • 物件管理35%
  • 入金管理20%
  • 顧客対応20%
  • オーナー対応15%
  • 営業活動10%
SaaS導入
業務時間
再配分
AFTER
SaaS導入後
  • 物件管理10%
  • 入金管理5%
  • 顧客対応35%
  • オーナー対応10%
  • 営業活動40%
営業・顧客対応に充てる時間が 10% → 75% へ。中小不動産会社の成長エンジンを回す本質的な改善。
業務時間配分の典型変化(目安)。Excel/紙運用では物件管理・入金管理に時間が割かれているが、SaaS導入で営業・顧客接点に時間を再配分できる構造変化が起きる。

不動産業務の関連記事 — あわせて読みたい

⚡ 中小不動産会社 統合SaaS
業務改善を3ステップで
Excel脱却・追客自動化・電子契約まで14機能。賃貸管理・CRM・電子契約・反響対応まで14分野を1つのプラットフォームで完結。
✓ 月10時間削減
✓ 14機能統合
✓ クレカ不要
無料で始める →

不動産業務のよくある質問 FAQ|実務で押さえるべきポイント

Q1. 売主に専任・専属専任・一般のどれを勧めるべきですか

専任が標準。専属専任は売主が他県在住・高齢・業界事情に疎い場合のみ提案、一般は売主の強い希望がある場合のみ。専属専任にすれば自動的に業者が頑張るというのは幻想で、業者の熱量は契約形態だけで決まらない。

Q2. レインズ登録の7日以内ルールはどう計算しますか

契約締結日の翌日から起算して、休業日 (土日祝・年末年始・GW) を除外してカウント。自社では安全側に倒して「2営業日以内に登録」を社内ルールにしている。法律より早いが、計算ミスや解釈の余地を消すため。

Q3. 業務処理状況報告の頻度は、法定の最低限で良いですか

法定は専任で2週間に1回、専属専任で1週間に1回。自社は月2回 (1日・15日) の定期報告日を設定し、テンプレートメールで運用。法定通りより少し丁寧にすることで、売主からの信頼を維持できる。

Q4. 媒介手数料の値引き要請には、どう対応していますか

原則として応じない。値引きの根拠が薄く、後の案件すべてで値引き前提になるから。代わりに、媒介手数料に含まれるサービス内容 (専属広告・内見立会・契約書作成・引渡し立会) を売主に明示して、納得感を作る。

Q5. 囲い込みの疑いをかけられないために、何を気をつけるべきですか

レインズ登録の早期実施、他社からの問合せへの48時間以内回答、業務処理状況報告のログ保存、ポータルとレインズの掲載齟齬の週次照合、両手仲介を狙わず片手でも歓迎する姿勢。2024年からレインズが他社問合せのログを自動記録するシステムに更新されており、囲い込み運用の証跡が残りやすい。

Q6. 一般媒介で受託した物件の業務処理状況報告は、どうすべきですか

法的義務はないが、自社では月1回の任意報告を実施。一般媒介でも報告を入れることで、売主の信頼を維持し、専任への切替を提案するきっかけにもなる。報告を怠ると「あの業者は何もしていない」と思われ、解除されるリスクが上がる。

Q7. 媒介契約期間の3か月が経過した後の更新は、自動更新で良いですか

自動更新は推奨しない。消費者契約法上、売主の更新意思を明示的に確認しない運用は問題視される可能性がある。自社では期間満了の14日前までに更新意思を売主に書面で確認し、新規に書面で更新する運用にしている。

Q8. 媒介契約解除時の広告費・営業費の請求は、どこまで認められますか

標準約款では「実費の範囲」と定められているが、上限の明示はない。自社の特約では「媒介手数料の半額を上限」と明記している。過大な請求は売主との関係を破壊するし、後で違約金として無効になる可能性もある。実費の証拠 (広告掲載料の請求書など) を社内ファイルに必ず残す。

不動産業務の利益相反開示 — 馬場生悦 = ULSAPO 創業者

本記事の著者である馬場生悦は、不動産SaaS「ULSAPO」(https://ulsapo.jp) の創業者であり、本記事中で配布している媒介契約書テンプレートは、当社製品 (ドキュメント自動生成機能) の標準雛形として組み込まれている。レインズ登録の運用フロー・業務処理状況報告のテンプレも、当社製品の機能として実装されている。記事中の運用ルール・判断軸は、神奈川県横浜市の自社で2009年〜2026年に媒介契約を累計約450件 (売買140件+賃貸310件) 受託してきた実体験に基づく。2021年5月の業務停止処分5日間の事件も、再発防止策の設計動機として当社製品に反映されている。読者は本記事を「中立的な解説」ではなく「製品提供者による現場経験の開示」として受け取ってほしい。なお、文中に挙げた個別案件 (2021年5月の西区マンション・2019年7月の鶴見区マンションなど) は、当事者の特定を避けるため一部詳細を改変している。レインズ・SUUMO・LIFULL HOMESは各機構・各社の登録商標であり、当社との資本関係・販売提携関係はない。

▼ ULSAPO を無料で始める

中小不動産向けに提供。
本格 業務 SaaS を月額 0 円から。

賃貸管理・CRM・電子契約・物件管理・マイソク作成・業者間流通 (BB) ─ 14 機能をワンライセンスで。クレカ不要、登録 30 秒、宅建士 馬場生悦が現場で設計。

30 秒で無料登録 →
✓ クレカ不要 ✓ 月額 0 円から ✓ 1 週間で導入
まずは詳細を見たい方は → 機能・料金の全体像 / 30 分デモを予約

実装の第1ステップ — 現状把握から始める

改善に着手する前に、現状の業務フロー・所要時間・関係者を可視化することが重要です。最低1週間の時間記録をとり、改善ポテンシャルが大きい業務を3つに絞ってからスタートします。

実装の第2ステップ — 小さく試して効果検証

いきなり全社展開せず、1〜2名のキーパーソンで2〜4週間の試験運用を行い、改善効果を数値で確認してから全社展開に進めるのが定石です。

実装の第3ステップ — 全社展開と継続改善

試験運用で得たノウハウを全社マニュアルに反映し、月次の改善会議で運用上の課題を吸い上げます。3〜6ヶ月の継続運用で本格的な定着が見えてきます。

よくある質問 FAQ|実務の疑問に答える

本記事の論点に関連する、現場でよく寄せられる質問への回答をまとめました。

Q1. 業務改善はどこから始めるべきですか?
A. 時間調査 (各業務の所要時間) を1週間実施し、上位3業務を特定するところから始めるのが鉄則です。改善効果の大きい業務に資源を集中投下できます。
Q2. DXとIT化の違いは何ですか?
A. IT化は既存業務を効率化するに留まり、DXは業務プロセスとビジネスモデル自体を再設計する取り組みです。中小不動産会社はまずIT化から始め、段階的に DX へ進化するのが現実的です。
Q3. SaaS 導入の予算感はどれくらいですか?
A. 中小規模会社で月額5-15万円、年間60-180万円が目安。ROI は導入1年以内に200-300%に達する事例が一般的です。
Q4. 業務マニュアルはどう整備すべきですか?
A. 動画 + チェックリスト + テンプレートの3点セットが最も定着率が高くなります。文書だけでは新人の習得に時間がかかります。
Q5. 業務改善が現場に定着しない原因は?
A. 「経営層の本気度が見えない」「個人にメリットが提示されない」「中間管理層が抵抗する」の3点が主要原因。トップダウンと現場ボトムアップの両輪設計が必要です。
FIELD NOTE / 馬場の現場メモ
著者: 馬場生悦 (宅建士・自社200室運営)
▸ 失敗した話

Excel管理から SaaS への移行を試みた最初の年、「全部一気に切り替える」と決めて社内に発表した。3週間後、現場から「Excelの方が早かった」「新システムが動かない」「データが見つからない」と苦情が殺到。結局、半年で旧Excel運用に戻り、移行コストとモチベーションロスだけが残った。

▸ そこから得た学び

業務改善の失敗の9割は「全部一気に切り替える」ことが原因。現場は「現状の業務」と「新しい業務」を同時に覚えることに耐えられない。

▸ 今やるべきこと

SaaS導入は「1機能ずつ」「1部署ずつ」段階的に切り替える。最初の3ヶ月は旧Excelと並行運用し、新システムが業務効率を上回ったタイミングで旧Excelを廃止する。

この現場メモは筆者が現場で実際に経験したエピソードに基づきます。Google E-E-A-T (Experience) 観点で、本記事の論点が机上の理論ではなく実体験に裏付けされていることを示す情報です。

同じテーマで深掘りしたい場合や、関連する論点を整理する際にお読みください。

▸ 関連シリーズ (契約書テンプレ + ローン戦略)

本記事は不動産業務の「契約書類整備 + ローン戦略」シリーズ7本のうちの1本です。シリーズ全体を読むことで、お客様提案から契約・ローン審査まで一気通貫で対応できる知識が身につきます。

出典・参考資料

本記事の主張は以下の公的機関・業界団体の公表情報をもとにしています。

よくある質問

Q. 業務改善は何から手をつけるべきですか?
業務改善の第一歩は、「何が遅いのか、何が手作業なのか」を明確にすることです。多くの企業は問題が何かを把握していないまま、ツール導入に走ってしまいます。まずは 1 週間分の業務フロー図を作成し、各段階にかかる時間を計測してください。その結果から改善効果が最大の業務 TOP 3 に取り組むことが、最短での ROI 獲得につながります。
Q. 業務改善で ROI を測定するにはどうすればよいか?
ROI 測定の基本は「改善前後の工数差 × 人件費」です。例えば「営業報告書作成が月 40 時間 → 5 時間に短縮」なら、月 35 時間 × 時給換算で削減額が算出できます。また、改善による「顧客応対品質向上」「ミス低減」「営業機会増」なども定量化すると、経営層への説得力が高まります。
Q. DX 導入で失敗しないためにはどうすればよい?
失敗パターンの多くは「ツールありき」で検討を進めることです。重要なのは「解決したい課題」を明確にしてからツールを選ぶことです。さらに、導入後 3~6 ヶ月のフォローアップが不足すると、結局使われないツールになってしまいます。導入時には「変更管理」の仕組みと「使い方レッスン」の時間を組み込むことが必須です。