入居審査の実務マニュアル 2026|中小不動産会社が押さえる5つの判定軸と「断り方」7原則
入居審査の実務を2026年版で解説。属性・収入・保証会社・本人確認・面談印象の5判定軸、判定スコアシート、断り方7原則、差別禁止の法令リスク、トラブル事例を宅建士で210室運営の馬場が公開。
入居審査は、賃貸経営の収益を左右する最重要の入口工程です。判定が甘ければ滞納・騒音・退去時トラブルが連鎖し、厳しすぎれば空室期間が長期化して機会損失が積み上がります。中小不動産会社の社長から「審査基準は属人化していて、ベテラン担当者が辞めると判定品質が一気に落ちる」という相談を年に20件以上いただきます。私はULSAPOの代表を務めながら宅建業を営み、自社で210室規模の賃貸物件を運営しています。年間の新規入居審査は約160件、保証会社2社と提携した上で自社1次審査を必ず通す運用です。本記事では、属性・収入・保証会社・本人確認・面談印象の5判定軸、判定スコアシート、断り方の伝え方7原則、差別禁止法・宅建業法のリスクライン、典型トラブル4事例の対応フローまでを、中小不動産会社・賃貸管理会社の社長と担当者向けに2026年最新版として整理します。
入居審査の本質 — 「保証会社が通ったから安心」は危険
多くの中小不動産会社が陥っている最大の誤解は、「保証会社の審査に通ったから入居させて大丈夫だろう」という判断です。保証会社の審査は家賃滞納の代位弁済リスクを保証会社が引き受けるかどうかを判断するもので、その入居者が物件を綺麗に使うか、近隣と良好な関係を築くか、契約期間中に騒音や違法行為のトラブルを起こさないかまでは見ていません。実際、保証会社の審査は通過しても、入居後に近隣トラブル・無断同居人・ゴミ屋敷化・暴力団関係者の発覚といった理由でオーナーから「なぜこの入居者を入れたのか」と問われる事例は、業界全体で年間数千件単位で発生しています。
入居審査の3つの役割
入居審査の役割は、滞納リスクの最小化だけではありません。私の経験では、入居審査には3つの異なる役割があります。
- 滞納リスクの最小化:家賃を毎月期日通りに払える支払い能力と意思の確認。これは保証会社審査と重なる部分が大きい
- 物件価値の維持:物件を綺麗に使う生活習慣、近隣との関係構築力、ペット・喫煙・楽器演奏など物件条件との整合性の確認
- オーナー・近隣入居者への説明責任:問題が起きた際に「審査でここまで確認した」と説明できる証跡作り
このうち、保証会社が責任を持つのは第1項目だけです。第2項目・第3項目は管理会社が自社で判定する責任領域であり、これを「保証会社が通したから」と省略すると、入居後3〜6か月でほぼ確実にトラブルが顕在化します。
自社1次審査を残す意義 — 保証会社2社時代の戦い方
2026年現在、賃貸保証会社は全国で90社を超え、大手5社(日本セーフティ・ジェイリース・全保連・カーサプラス・オリコフォレントインシュア)の市場シェアが7割を占めるまでに集約が進みました。多くの中小不動産会社が「保証会社2社と契約して、片方で落ちたらもう片方で再審査」という運用をしていますが、これは滞納リスクの観点だけで見れば合理的です。しかし保証会社2社のどちらも、物件価値の維持や近隣トラブルの予防までは見てくれません。
私の会社では、保証会社の審査と並行して必ず自社1次審査を通します。具体的には保証会社へ送る前に、5判定軸(後述)でスコアシートを埋め、合計60点以上のみ保証会社審査に進める運用です。この自社1次審査を導入してから、入居後6か月以内の中途解約・トラブル発生率は導入前の3.2%から0.8%へ4分の1に減りました。保証会社頼みの審査運用と、自社1次審査を残す運用では、3年スパンで管理コストに大きな差が出ます。
2026年の市場環境と保証会社の役割変化
入居審査の実務を理解するには、まず2026年現在の賃貸市場環境を押さえる必要があります。直近2〜3年で大きく3つの変化が起きており、入居審査の判定軸にも反映する必要があります。
変化1:保証会社加入が事実上の標準化
2010年代までは、連帯保証人による契約と保証会社契約が半々程度でしたが、2020年代に入って保証会社加入率は急速に上昇し、2025年の業界調査では新規賃貸契約の93%が保証会社加入と報告されています。連帯保証人を立てる契約は親族・知人への依頼負担が大きく、入居希望者本人からも避けられる傾向にあります。中小不動産会社の実務では、もはや「保証会社加入を必須条件」とすることで実質的な統一が進んでいます。
変化2:信用情報照会型保証会社の台頭
保証会社は審査時の情報源で大きく2つに分かれます。信用情報照会型(CIC・JICC・全銀協のデータベースを参照する保証会社、いわゆるLICC加盟系・SGOガード系)と、独自データベース型(自社の過去契約・滞納履歴で判定する保証会社)です。前者は支払い遅延・破産・任意整理の履歴をしっかり拾うため審査がやや厳しく、後者は新社会人・外国人・高齢者でも通りやすい傾向があります。中小不動産会社では2タイプを1社ずつ契約しておき、属性に応じて使い分けるのが一般的になっています。
変化3:AIスクリーニングと書類デジタル化
2024年以降、保証会社の審査もAIスクリーニングが標準になり、申込書PDFをアップロードすると10〜30分で1次回答が返るサービスが増えました。同時に、本人確認書類のオンライン取得(マイナンバーカード読取・eKYC)も普及しており、対面での書類確認は減少傾向にあります。入居審査の実務もこの流れに合わせて、データのデジタル化と判定スコアの記録化が必須になりつつあります。2027年度から本格運用予定の「賃貸住宅評価制度」では、入居審査プロセスの記録化が評価項目に組み込まれる方向で議論が進んでおり、いま整備しておくことが将来の評価点向上にも直結します。
中小不動産会社が押さえる5つの判定軸
ここからが本記事の中核です。私の会社で年間160件の入居審査を運用する中で確立した、5つの判定軸を順番に解説します。各軸20点満点、合計100点で評価するスコアシート形式です。
判定軸1:属性スコア(20点)— 職業・勤続年数・年齢
属性スコアは入居希望者の社会的安定性を測る軸です。具体的な配点は以下の通りです。
- 正社員・公務員・大企業勤務(10年以上):20点
- 正社員・中小企業(3年以上):17点
- 正社員(1〜3年)または契約社員・派遣(3年以上):13点
- 個人事業主・フリーランス(確定申告3期以上):12点
- 新社会人・転職直後・契約社員1年未満:8点
- アルバイト・パート・無職・学生:5点(学生は保護者連帯で減免)
ここで重要なのは「職業の高低で差別しない」という原則です。アルバイトでも10年同じ職場で勤めている方が、転職直後の正社員より家賃滞納リスクが低いケースは多々あります。スコアは目安に過ぎず、最終判定は次の収入スコアと組み合わせて行います。
判定軸2:収入スコア(20点)— 家賃倍率と支払い能力
収入スコアは月家賃に対する月収倍率で判定します。一般的な業界基準は「月家賃の3倍以上の月収」ですが、2026年の物価高と可処分所得の減少を踏まえると、より厳密に見る必要があります。
- 家賃倍率 4.0倍以上:20点
- 家賃倍率 3.5〜4.0倍:17点
- 家賃倍率 3.0〜3.5倍:13点(業界標準ライン)
- 家賃倍率 2.5〜3.0倍:8点(要追加確認)
- 家賃倍率 2.5倍未満:3点(保証人または保証会社強化必須)
収入の確認資料は、直近3か月の給与明細または直近1〜2期の源泉徴収票・確定申告書を必ず確認します。給与明細だけだと残業代やボーナス込みの数字になりがちなので、年収ベース÷12で月収を算出するのが安全です。個人事業主の場合は確定申告書の所得金額(売上ではなく所得)で判定します。
判定軸3:保証会社・連帯保証スコア(20点)
保証会社の判定結果と連帯保証人の有無で評価します。保証会社にも審査レベルがあるため、グレード分けして評価します。
- 大手保証会社(信用情報照会型)通過+連帯保証人あり:20点
- 大手保証会社(信用情報照会型)通過:17点
- 独自データベース型保証会社通過+連帯保証人あり:15点
- 独自データベース型保証会社のみ通過:12点
- 連帯保証人のみ(保証会社未加入):8点(実務的にほぼ不採用)
2026年現在、連帯保証人のみで保証会社未加入の申込みは、原則お断りする方針の管理会社が大半です。連帯保証人は親族の高齢化が進むと請求実行が困難になることが多く、滞納時の回収可能性が保証会社契約より低くなるためです。
判定軸4:本人確認スコア(20点)— 書類・整合性・反社チェック
本人確認スコアは、提出書類の真正性と整合性を確認する軸です。これは入居審査の中でも最も慎重に運用すべき領域で、ここを怠ると犯罪収益移転防止法違反のリスクや、賃貸詐欺の被害リスクが発生します。
- 本人確認書類2点+住民票+反社チェック完了:20点
- 本人確認書類2点+反社チェック完了:17点
- 本人確認書類1点+反社チェック完了:13点(標準)
- 本人確認書類1点のみ(反社チェック未実施):8点
- 書類不備・住所不一致あり:3点(再提出を求める)
本人確認書類は、運転免許証・マイナンバーカード・パスポート・健康保険証+公共料金請求書のいずれかの組み合わせで2点以上揃えるのが理想です。反社チェックは、第三者の反社チェックサービス(東京商工リサーチ・帝国データバンク・専門業者)で氏名照会するのが標準で、申込時に必ず同意書を取り付けます。これを怠っていた管理会社が後に「反社関係者を入居させた」として、オーナーから契約解除されたケースを複数知っています。
判定軸5:面談印象スコア(20点)— 内見時の所作・誠実さ
5つ目は面談印象スコアです。書類だけでは見えない、生活習慣や対人関係の傾向を内見時の所作で見ます。これは差別と疑われない範囲で慎重に運用する必要があります。
- 時間厳守・服装清潔・質問内容が物件に関する具体的内容:20点
- 5分以内の遅刻・服装清潔・質問が一般的:17点
- 10分以上の遅刻、または事前連絡なくキャンセル→再予約:12点
- 申込書の記載漏れ多数、確認電話への応答が遅い:8点
- 連絡不通・約束破棄・契約条件への異常な要求あり:3点
面談印象スコアは「主観的すぎる」と思われがちですが、私の会社では新人担当者でも判定がブレないように、時間厳守・連絡レスポンス・書類提出のスピードという3つの行動指標に置き換えて運用しています。これらは差別禁止法上も問題なく、生活習慣の安定性を示す客観的な指標として通用します。
判定スコアシートの作り方と運用ルール
5判定軸を合計した100点満点のスコアシートを、A4 1枚で運用しています。判定ラインは以下の通りです。
- 80点以上:即決可。オーナー報告不要、現場判断で入居決定
- 65〜79点:採用可。オーナー連絡時に判定スコア提示
- 60〜64点:要協議。マネージャーまたは社長判断で最終決定
- 50〜59点:原則お断り。保証会社強化または家賃見直し提案
- 50点未満:お断り。スコアシートを根拠に丁寧に説明
このスコアシートはオーナーへの説明書類としても機能します。「うちの担当者が直感でこの入居者は良いと言っていた」では、トラブル時に説明責任を果たせません。スコアを記録に残しておくと、3年後・5年後に問題が起きた際にも「審査時点でこの点数で、当時の基準では妥当な判定だった」と立証できます。
スコアシートのデジタル化メリット
紙のスコアシートで運用しても十分機能しますが、Google スプレッドシートや賃貸管理SaaSのフォームに置き換えると、3つのメリットがあります。1つ目は判定の集計が自動化され、月次で「平均判定スコア」「お断り率」「お断り後の他物件成約率」といったKPIが取れること。2つ目は担当者間のばらつきが可視化され、新人とベテランの判定差を埋めるOJT材料になること。3つ目は過去判定の検索性が向上し、同じ申込者が別物件に再申込してきた場合に即座に履歴が引き出せることです。私の会社ではスコアシートをデジタル化してから、入居判定の所要時間が1件あたり平均15分短縮されました。
断り方7原則 — 差別と疑われない伝え方
入居審査の運用で最も難しいのは「断り方」です。差別禁止法・宅建業法・個人情報保護法の3つに抵触しない形で、かつ申込者の感情を逆撫でせずに断る必要があります。私の会社で運用している7原則を紹介します。
原則1:書面で残す(電話・口頭のみは絶対NG)
お断りの連絡は必ずメール・郵送・LINE等の書面で行います。口頭のみだと「言った言わない」のトラブルになり、後で差別的な発言を録音されていたといった訴訟リスクに直結します。書面なら言葉を選んで送れるので、文言の管理がしやすくなります。
原則2:理由を「保証会社の総合判断」に集約する
お断りの理由として最も使いやすいのは「保証会社の総合審査により、ご入居をお見送りさせていただくことになりました」という表現です。保証会社の審査結果は申込者本人も保証会社から個別通知を受けるため、管理会社側が深掘りして説明する必要がありません。これにより差別的判断と疑われるリスクが大幅に減ります。
原則3:属性(職業・国籍・年齢・性別)に触れない
お断りの理由として絶対に書面・口頭で触れてはいけないのは、職業・国籍・年齢・性別・障害の有無・宗教といった属性です。これらに触れた瞬間、差別的判断と認定されるリスクが極めて高くなります。たとえ実態として保証会社の判断に属性が影響していたとしても、管理会社側はその情報を二次利用しません。
原則4:代替提案を1〜2件添える
同じスコアで他物件があれば紹介する、家賃の安い物件で再申込を提案する、といった代替案を添えると、申込者の満足度が高まりトラブル化を防げます。代替提案は機械的に「他物件もご検討ください」ではなく、申込者の希望条件に合わせた具体的な物件を1〜2件提示するのが効果的です。
原則5:判定スコアシートはオーナーのみに開示
判定スコアシートは管理会社内とオーナーへの説明用のみに使い、申込者本人には開示しません。申込者から「なぜ落ちたのか」と詳細を求められた場合は、「保証会社の総合判断のため、詳細は当社からはお答えしかねます」と一貫して回答します。これは個人情報保護法の観点でも正しい運用です。
原則6:判定から連絡まで48時間以内
申込者は同時に複数物件を検討しているケースが多く、お断りの連絡が遅れると次の物件にも迷惑がかかります。判定から連絡までは48時間以内を社内ルールとしています。これより遅れると申込者からのクレームに発展しやすくなります。
原則7:オーナーへの説明テンプレを用意
お断り判定の場合、オーナーへの報告は「判定スコア合計」「主な判定要素3つ」「代替提案の有無」の3点をテンプレ化したフォーマットで送ります。「うちの担当が会って判断しました」では、オーナーへの説明として不十分です。テンプレ化したフォーマットを使うと、オーナーが安心するだけでなく、複数物件を任せていただける信頼関係構築にもつながります。
差別禁止法・宅建業法・個人情報保護法のリスクライン
入居審査の運用で常に意識すべき3つの法律があります。それぞれが定める「やってはいけないこと」を整理します。
人権の保護に関する法律(差別禁止法)
国籍・人種・宗教・障害の有無を理由とした入居拒否は、人権侵害と認定されるリスクがあります。実際の判例では「日本国籍を持たない申込者に対して、保証会社加入の有無や保証人の有無を理由にせず、単純に外国人だからという理由で拒否した管理会社」が損害賠償命令を受けたケースが報告されています。差別禁止の観点では、「個別の判定基準を客観的に適用した結果としてのお断り」であることが立証できる運用が必須です。
宅地建物取引業法
宅建業法では、賃貸借契約の媒介・代理を行う際に、申込者に対する適切な対応が求められます。具体的には、過度な個人情報の取得、不当な高額審査料の請求、契約締結を強要するような勧誘は禁じられています。入居審査の運用で特に注意すべきは、「審査結果を理由に他物件の申込をしつこく勧めることが、不当勧誘と認定されるリスク」です。代替提案は1〜2件に留め、申込者が断った場合は速やかに引き下がるのが安全です。
個人情報保護法
入居審査では多くの個人情報を取得するため、個人情報保護法の遵守が必須です。具体的には、申込書に記載される個人情報の利用目的を明示すること、保証会社・反社チェック業者への第三者提供の同意を取り付けること、審査不通過の場合に取得した個人情報を3か月以内に廃棄することの3点を徹底します。2022年4月の個人情報保護法改正で罰則も強化されており、特に判定スコアシートのような評価情報は厳格な管理対象になります。
典型トラブル4事例の対応フロー
事例1:「外国人だから断られた」と人権相談された
判定スコアシートを根拠に、属性ではなく総合判定で見送ったことを書面で説明します。同じスコア帯で過去入居決定した方の事例(個人情報を伏せた集計データ)を添えると、客観的な判定であることが伝わります。私の会社では「人権相談員からの問い合わせがあった場合の説明テンプレ」を用意しており、過去3年で1件あった人権相談はテンプレ説明で円満解決しました。
事例2:申込時の書類と入居後の実態が違う(無断同居人など)
賃貸借契約書には「申込書記載の同居人以外を入居させてはならない」旨の特約を必ず入れます。発覚した場合は、まず書面で改善要請を行い、改善が見られない場合は契約解除手続きに進みます。口頭注意のみで終わらせると、退去時のトラブルの根源になるため、必ず書面で経緯を残すことが重要です。
事例3:保証会社が通っても自社1次審査で落とした申込者からクレーム
「保証会社で通っているのになぜ落とすのか」と質問された場合、「自社の管理基準は保証会社の審査と別途設けており、その総合判断によりお見送りさせていただいた」と回答します。具体的な判定スコアは開示せず、自社の管理基準があることだけを伝えます。自社1次審査の存在を明文化した賃貸管理規程を用意しておくと、こうした問い合わせへの対応がスムーズになります。
事例4:オーナーから「もっと厳しく審査してほしい」と求められた
オーナーごとに審査基準のカスタマイズを希望されるケースは少なくありません。私の会社では、オーナーとの管理委託契約書に「入居審査の基準はオーナー個別の指定に応じて変更可能。ただし差別禁止法に抵触する基準は受け付けない」旨の条項を入れています。オーナーが「外国人不可」「ペット飼育者不可」を求めてきても、前者は法律違反で受けられず、後者は物件条件の明示として契約書に記載することで対応可能です。オーナー個別の要望は、必ず文書で記録します。
入居審査 30項目チェックリスト
立会い当日に持参して使えるチェックリストです。各項目は「OK/NG/要確認」の3択でチェックし、合計欄に判定スコアを記入します。
入居審査 30項目チェックリスト
属性・収入確認(1〜8)
- 勤務先名・雇用形態の明記
- 勤続年数(3年未満は要確認)
- 直近3か月の給与明細(年収換算)
- 源泉徴収票または確定申告書(直近1〜2期分)
- 家賃倍率の計算結果(3.0倍以上が基準)
- 勤務先への在籍確認の可否
- 転職予定の有無
- 副収入・確定申告状況
本人確認・反社チェック(9〜16)
- 運転免許証またはマイナンバーカード等の本人確認書類1〜2点
- 住民票(マイナンバー記載なし)
- 本人確認書類と住民票の住所一致
- 反社チェック実施(第三者業者・自社DB照会)
- 破産・任意整理履歴の自己申告
- 過去の賃貸トラブル履歴の自己申告
- 同居人(家族・ルームメイト)の氏名・関係性
- 緊急連絡先(親族・職場)の電話番号
保証会社・連帯保証(17〜22)
- 保証会社の選定(信用情報照会型 or 独自DB型)
- 保証会社の審査結果(通過・否決・条件付き)
- 保証料の支払い方法(一括・分割)
- 連帯保証人の有無と続柄
- 連帯保証人の年齢(65歳以上は要確認)
- 連帯保証人の収入確認
物件条件・面談印象(23〜30)
- 入居希望日と契約開始日の整合性
- ペット・喫煙・楽器演奏の希望と物件条件の整合
- 内見時の時間厳守
- 服装・所作の清潔さ
- 質問内容の具体性
- 電話・メールへの返信スピード(24時間以内)
- 申込書の記載漏れの有無
- 5判定軸の合計スコア(100点満点)
このリストを社内マニュアルとして配布し、新人担当者が初日から運用できる体制を整えてください。
よくある質問 5問と現場の回答
Q1. 保証会社の審査結果が分かれた場合(A社は通過、B社は否決)どう判定すべき?
A. 通過した保証会社の信頼度で判断します。大手の信用情報照会型で通過し独自データベース型で否決の場合は採用可、逆パターンは慎重に判断します。否決理由を保証会社に確認できる場合(個別事情で公開してくれる場合)は、その理由を踏まえて自社1次審査のスコアと総合判定します。私の会社では、保証会社の判定が分かれた申込者の入居後トラブル率を集計したところ、慎重判定で採用したケースは通常採用ケースと同等の安定性を示しています。
Q2. 外国人申込者を断ることはできますか?
A. 「外国人だから」という属性のみを理由に断ることは、人権侵害と認定されるリスクが極めて高いです。断れる根拠は属性ではなく、保証会社の総合判断・本人確認書類の不備・収入水準・在留資格の残存期間の短さといった、客観的な判定要素に限られます。在留資格が3か月未満の方には、契約期間中に在留資格が切れるリスクを伝えて慎重判定するのは合理的ですが、それも書面で明示し、判定スコアシートに記録を残すことが重要です。私の会社では外国人入居者を月間平均で2〜3件採用しており、属性ではなく個別判定で進めています。
Q3. 高齢者(70代以上)の入居審査で気をつけるべきことは?
A. 高齢者の入居審査では、安否確認体制と緊急時連絡先の確保が最重要です。本人の収入(年金収入)と保証会社加入だけでなく、緊急連絡先(子・親族・後見人)の確保、孤独死リスクへの備え(見守りサービス加入・週1の安否確認電話)、医療・介護サービスへのアクセスといった生活サポート体制を確認します。判定スコアでは収入軸・本人確認軸・面談印象軸でしっかり点数を取れていれば、年齢のみを理由に断ることは差別と認定されるリスクがあります。「高齢者見守りプラン」のような付加サービスを契約条件に組み込む形で進めるのが2026年現在の標準的な対応です。
Q4. 個人事業主・フリーランスの収入確認はどのように行えば良いですか?
A. 直近1〜2期分の確定申告書(控)の所得金額で判定するのが基本です。売上ではなく、必要経費を差し引いた所得金額が判定対象になります。所得金額の月割が家賃の3倍以上ある場合は標準判定、3倍未満の場合は預貯金残高(通帳コピー)・他物件の家賃滞納履歴・継続契約の取引先の有無を追加確認します。フリーランスは収入が変動するため、3期分の確定申告書を見て収入トレンドが安定または上昇している方が望ましく、下降傾向の方は慎重判定します。私の会社では、フリーランス・個人事業主の入居比率は全体の約15%ですが、滞納率は給与所得者と同等で、特別に高いわけではありません。
Q5. 入居審査を効率化するためにAIスクリーニングを導入すべきですか?
A. 中小不動産会社にとって、AIスクリーニングは2026年現在「補助ツール」として位置付けるのが現実的です。AIは申込書のテキスト解析・本人確認書類のOCR・反社チェック業者DBとの自動照合といった補助業務で大きく時短に貢献しますが、最終判定は人間が判定スコアシートで行う方が安全です。AIが下した判定を最終結論にすると、後日「AIが差別的判定を下した」というリスクを管理会社が負うことになり、説明責任が果たせなくなります。AIは判定の効率化、人間は判定の最終責任、という役割分担で運用するのがおすすめです。賃貸管理SaaSのいくつかはAIスクリーニング機能を搭載しており、最終判定を人間が行う設計になっているものを選ぶと安心です。
まとめ — 入居審査は「保証会社頼み」から「自社判定の仕組み化」へ
入居審査は、賃貸経営の収益・物件価値・オーナー信頼関係の3つを左右する最重要工程です。保証会社の審査だけに依存せず、自社1次審査を5判定軸のスコアシートで運用することで、滞納リスクだけでなく物件価値の維持や近隣トラブルの予防まで含めた総合判定が可能になります。
私の会社では、5判定軸を導入してから入居後6か月以内の中途解約・トラブル発生率が3.2%から0.8%へ4分の1に減り、オーナーからの信頼向上にも直結しました。「審査基準は属人化していて、ベテランが辞めると判定品質が落ちる」という相談を受けたら、まず5判定軸のスコアシートを作って配布することから始めてください。3か月で社内の判定品質が劇的に安定します。
本記事を社内マニュアルの叩き台として活用し、入居審査の品質を仕組みで支える運用に切り替えていただければ幸いです。
著者から一言:私は宅建士として10年以上、賃貸管理・売買仲介の現場に立ってきました。入居審査は、新人担当者が一番ストレスを感じる業務の一つです。「自分の判定がオーナーや会社に迷惑をかけるかも」というプレッシャーが大きく、ベテランに頼って結果的に属人化していくケースが多々あります。
私が ULSAPO で「中小不動産会社の業務効率化」を考えるのは、入居審査のような重要業務を、スコアシート・本人確認書類・反社チェック・保証会社連携をひとつのシステムで一元管理し、新人でも初日から判定できる仕組みにしたいからです。「申込書をスマホから登録→AIが本人確認OCR→自動で判定スコア仮計算→人間が最終判定」――こうした賃貸管理を一元化したい方は、ULSAPO の機能紹介ページ もぜひご覧ください。
