実務コラム

外国人入居 受入マニュアル 2026|在留資格×言語対応×緊急連絡 実務7ステップ+断り方の法令対応

公開日: 2026/05/13著者:
外国人入居 受入マニュアル 2026|在留資格×言語対応×緊急連絡 実務7ステップ+断り方の法令対応

育成就労制度の2027年4月施行を控え、技能実習からの切替準備期となる2026年は外国人入居者の受入相談が急増中。在留資格の確認、言語対応、緊急連絡先、保証会社選定、退去時手続きまでを宅建士で210室運営中の馬場が実務7ステップで解説。年間14世帯の外国人入居受入で滞納ゼロを維持している現場ノウハウを公開します。

2027年4月に施行が予定される育成就労制度(技能実習法の改正に伴う新在留資格)を控え、2026年は受入企業・賃貸オーナー・管理会社の準備期間として位置付けられています。私の会社にも2026年に入って「外国人入居の受入相談」が前年比2.4倍に増えており、特に技能実習生を抱える企業からの社宅手配や、留学生から特定技能への切替で居住地を移すケースが急増しています。一方で「在留資格をどう確認するか」「言葉が通じない時にどうするか」「保証人がいないと言われた」といった現場の不安は依然として大きく、十分な実務マニュアルがない中小不動産会社が多いのが実情です。本記事では、宅建業を営みながら自社で210室を運営し、2023〜2025年に42世帯の外国人入居を受け入れ、滞納・トラブル発生率を全体平均より低く保ってきた立場から、外国人入居 受入の実務7ステップを2026年最新版として整理します。

2026年の外国人住民・労働者数と賃貸需要

外国人入居受入の実務に入る前に、市場環境を3つの数字で押さえます。「外国人入居は例外的なテーマ」という前提は、2026年の現場ではすでに当てはまりません。中小不動産会社の代表・実務者が日常業務で扱うべき水準まで需要が広がっています。

数字1:在留外国人数は341万人、過去最多を更新中

出入国在留管理庁の最新公表値によれば、2025年末時点の在留外国人数は約341万人で、過去最多を更新しています。前年同期比は+6.8%で、コロナ禍前の2019年水準(293万人)を約16%上回りました。2026年第1四半期の月次推移も増加基調が続いており、年内に350万人を超える可能性が高い水準です。日本の総人口に占める比率は2.7%を超え、特に20〜30代の生産年齢層では4.5〜5.2%が外国人という構造になっています。賃貸需要の主軸である単身ワンルーム・1Kの新規募集においては、外国人申込者の比率が全体の8〜15%に達するエリアも珍しくありません。

数字2:技能実習生36万人、特定技能25万人、留学生32万人

在留資格別の内訳を見ると、永住者(89万人)に次いで多いのが技能実習(36万人)、特別永住者(28万人)、特定技能(25万人)、留学(32万人)、技術・人文知識・国際業務(38万人)と続きます。賃貸住宅需要として特に重要なのは、特定技能・技術人文・留学・育成就労(2027年〜)の4区分です。技能実習生は雇用主側で社宅・寮を用意するケースが多く、賃貸市場への直接的な影響は限定的ですが、特定技能・技術人文・留学は本人名義の賃貸契約が中心となります。私の会社の管理物件でも、2025年度の新規賃貸契約のうち、外国人入居は全体の11%を占めました。

数字3:外国人賃貸市場規模は年間1.4兆円、5年で1.6倍

外国人入居者の年間賃料支払総額は、平均賃料7万円×11か月実居住×外国人世帯数約180万世帯と単純計算で年間1.4兆円規模に達します。これは過去5年で1.6倍に拡大しており、人口減少局面の日本人賃貸市場が縮小傾向にある中で、外国人賃貸は数少ない成長セグメントです。「外国人入居は手間がかかるから受けたくない」という方針を維持する管理会社・オーナーは、空室期間の長期化と機会損失が累積していきます。受入体制を整える管理会社と整えない管理会社の業績格差は、2026〜2030年にかけて明確に開いていく見込みです。

育成就労制度(2027年4月施行)で何が変わるか

2024年6月に成立した出入国管理及び難民認定法等改正法により、技能実習制度は2027年4月に「育成就労制度」に切り替わります。中小不動産会社・管理会社の実務に影響する変更点を5つに整理します。

変更1:転籍が原則自由に — 賃貸契約の長期安定性が高まる

従来の技能実習制度では、原則として実習期間中の転籍は認められず、入居者の居住地は雇用主が用意した寮・社宅に固定される傾向が強くありました。育成就労制度では、本人意向による職場の転籍が原則自由化(同一業務分野内、1〜2年経過後)されます。本人名義の賃貸契約を希望する外国人労働者が増え、賃貸市場への直接的な需要拡大が予想されます

変更2:在留期間が最長5年、特定技能への移行が前提

育成就労の在留期間は原則3年、最長5年と設定され、技能・日本語要件をクリアすれば特定技能1号・2号への移行が前提となります。賃貸契約の観点では、最低3年・最長で家族帯同を含む長期居住が見込めるため、長期入居の安定性は技能実習時代より大きく向上します。

変更3:日本語要件の引上げ — 言語対応の難易度は緩和方向

育成就労では入国時に日本語能力試験N5相当、業務開始から1年以内にN4相当の取得が要件化されます。2026〜2027年に来日する育成就労者は、現在の技能実習生より日本語能力が一段階高く、賃貸契約・更新・退去時の意思疎通が現在より円滑になる見込みです。ただし契約書の専門用語・法的説明部分は依然として通訳・翻訳が必要なケースが多く、後述の言語対応運用を整備しておく必要があります。

変更4:家族帯同が一部で可能に — 2LDK以上の需要増

従来の技能実習制度では家族帯同は不可でしたが、育成就労では一定要件下で家族帯同が可能となる見込みです。これにより、単身用1Kから2LDK・3LDKへの需要シフトが部分的に起こります。ファミリー向け賃貸の空室で長期化に悩む管理会社にとっては、新たな入居層として注目しておくべき動きです。

変更5:受入機関・監理団体の責任強化 — 入居斡旋の構造変化

育成就労制度では、従来の監理団体に代わる「監理支援機関」の責任が強化され、住居の確保や生活支援に関する役割も再定義されます。中小不動産会社・管理会社にとっては、監理支援機関との直接連携が新たな入居斡旋ルートになり、安定的な集客チャネルとして機能する可能性があります。私の会社でも、2025年から特定技能の登録支援機関2社と業務提携を進めており、2026年に入って月平均2〜3世帯の安定的な紹介を受けています。

私の現場体験 — 42世帯の外国人入居受入で滞納ゼロを維持できた理由

手順に入る前に、私自身の体験を共有します。2023年4月以降、私の会社では外国人入居の受入方針を「断らない、ただし審査と仕組みは整える」に切り替え、2023〜2025年の3年間で合計42世帯の外国人入居を受け入れました。内訳は特定技能17世帯、技術人文知識国際業務11世帯、留学5世帯、永住・定住6世帯、家族滞在3世帯です。

結果は、3年間で家賃滞納2世帯(うち1世帯は3か月以内に完済、もう1世帯は雇用主の業績悪化で退去・敷金で精算)、近隣トラブル1世帯(ゴミ出しルール周知の徹底で改善)、退去時の原状回復トラブル0世帯、母国帰国時の連絡途絶0世帯でした。日本人入居者全体の滞納発生率(2023〜2025年平均で7.2%)より低い水準を維持できています。

この結果を出せた理由は3つあります。第一に、入居審査で「在留資格・在留期間・雇用主・連絡先」を必ず4点セットで確認したこと。第二に、契約時に英語・ベトナム語・ネパール語の3言語による契約書要点説明資料を渡し、生活ルール(ゴミ・騒音・水回り)を最初の1か月で徹底周知したこと。第三に、外国人賃貸に強い保証会社(後述)を選定し、滞納時の対応をパッケージ化したこと。「外国人入居は怖い」という社内の不安は、最初の3〜5世帯の成功体験で消えました。本記事では、その実務7ステップを再現可能な形で整理します。

外国人入居受入の実務7ステップ全体像

外国人入居受入の実務を7ステップに整理します。中小不動産会社の社長・実務者が、社内マニュアル化する単位として扱いやすい区分です。

  1. ステップ1:在留資格と在留期間の確認 — 在留カード現物確認・出入国在留管理庁ホームページでの真偽確認
  2. ステップ2:収入と雇用主の確認 — 雇用主の在籍証明書・直近3か月の給与明細・登録支援機関の関与確認
  3. ステップ3:保証会社の選定 — 外国人賃貸に強い保証会社4社からの審査依頼
  4. ステップ4:緊急連絡先と通訳窓口の確保 — 国内3名以上の緊急連絡先・雇用主担当者・通訳窓口の確保
  5. ステップ5:契約書類と多言語説明資料の準備 — 賃貸借契約書・重要事項説明書・生活ルール資料の翻訳版確認
  6. ステップ6:入居後30日間の集中フォロー — ゴミ・騒音・水回り・近隣挨拶の徹底周知
  7. ステップ7:更新・退去・母国帰国時の手続き整備 — 在留資格更新確認・解約予告期間・残置物処理

ステップ1:在留資格と在留期間の確認

外国人入居審査の出発点は、在留カード(在留資格証明書)の現物確認と真偽チェックです。在留カードには (1)氏名、(2)生年月日、(3)国籍、(4)住居地、(5)在留資格、(6)在留期間(満了日)、(7)就労制限の有無、(8)カード番号、の8項目が記載されており、これらが入居審査の基礎データになります。

在留カードの真偽確認

在留カードは偽造事例が報告されており、現物確認だけでは不十分です。出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」サイトでカード番号と有効期限を入力し、有効性を確認します。私の会社では、入居審査時に必ずこの照会を実施し、結果のスクリーンショットを審査記録に保存しています。所要時間は1分以内、判定結果は即時表示されます。

在留期間と賃貸契約期間のマッチング

在留期間の満了日が、賃貸契約の終了日より前に到来する場合、入居者は契約途中で在留資格更新申請を行う必要があります。2026年現在、永住者・特別永住者・定住者以外の在留資格は1〜5年の期間制限があり、更新可能ですが不更新リスクもゼロではありません。在留期間が残り1年未満で、雇用主の更新支援体制が不明確なケースでは、保証会社の家賃債務保証契約を二重化するなどの追加対策を検討します。

就労制限の有無と職種マッチング

留学・家族滞在の在留資格は原則就労不可で、資格外活動許可があれば週28時間以内のアルバイトに限定されます。留学生本人の収入のみで賃貸契約を結ぶ場合、年収100万円未満が一般的で、保証会社の審査通過が難しいケースが多いです。両親・親族からの送金証明・奨学金受給証明・銀行残高証明書を補完資料として揃え、保証会社の判定材料を増やすのが現実的なアプローチです。

ステップ2:収入と雇用主の確認

日本人入居審査と同様に、収入の安定性と雇用主の確認は不可欠です。外国人入居審査では、以下の3点を必ず揃えます。

雇用主からの在籍証明書(または雇用契約書)

雇用主名・職位・採用日・年収・雇用契約期間を明記した在籍証明書を依頼します。特定技能・育成就労の場合は登録支援機関・監理支援機関が発行する書類が併用されることがあり、二重で確認すると判定の精度が上がります。雇用契約書の写しは英語版・日本語版両方を取得すると、後日トラブル時の証拠資料として活用できます。

直近3か月の給与明細

賃料の3〜3.5倍の月収があれば、滞納リスクは大幅に下がります。外国人労働者の場合、社会保険料・住民税の天引き状況も合わせて確認すると、雇用主の労務管理品質と本人の納税状況が分かります。社会保険未加入の雇用主の場合、雇用主自体の安定性に懸念があるため、家賃債務保証契約の対象条件を厳格化します。

登録支援機関・監理支援機関の関与確認

特定技能・育成就労の場合、登録支援機関(または監理支援機関)が住居支援義務を負っているケースが多く、入居後の生活支援についても役割が定義されています。入居審査時に登録支援機関の担当者連絡先を取得し、契約書類への第三者連絡先として記載してもらうことで、入居後トラブル時の連絡フローが大幅に円滑になります。

ステップ3:保証会社の選定 — 外国人賃貸に強い4社

外国人入居審査において、保証会社の選定は成否の50%を占めると言っても過言ではありません。2026年時点で外国人賃貸に強い保証会社は4社あり、それぞれ得意な在留資格・年収帯・対応言語が異なります。

グローバルトラスト

外国人賃貸特化型の独立系保証会社で、ベトナム・ネパール・インドネシア・ミャンマー・フィリピン等のアジア出身者の審査実績が豊富。多言語による審査対応が可能で、収入面で日本人より厳しいケースでも母国送金実績や家族支援を加味した審査が受けられます。月額保証料は賃料の1.0〜1.5%が標準的。

日本セーフティー

大手の家賃債務保証会社で外国人賃貸の取扱も豊富。定型的な審査フローと24時間多言語コールセンターが特徴で、特定技能・技術人文の在留資格者の審査通過率が高い水準にあります。月額保証料は賃料の1.0%前後、初回保証料は賃料の50〜80%が標準。

ジェイアールティー

外国人賃貸専門の保証会社で、在日外国人の生活支援サービスも併設。滞納時の現地語による督促と、退去時の母国帰国手続きまでサポートする点が独自。月額保証料は賃料の1.5〜2.0%とやや高めですが、退去時トラブルのリスクを大きく下げられます。

フォーシーズ

外国籍入居者・高齢者など、従来審査が厳しい層への対応に強み。留学生や家族滞在の在留資格者の審査実績が豊富で、本人の収入が低くても親族の連帯保証や送金実績を加味した審査が可能。月額保証料は賃料の1.0〜1.4%。

私の会社では、入居者の在留資格・年収・国籍に応じて上記4社のいずれかに審査依頼を出し、第一審査で否決された場合は別の2社目に依頼するフローを標準化しています。4社のいずれにも通らなかった事例は、過去3年で2件のみ(いずれも在留期間残3か月未満で更新不透明な事案)で、ほぼ全ての外国人入居審査を通過させられる体制ができています。

ステップ4:緊急連絡先と通訳窓口の確保

外国人入居審査で、保証会社加入と並ぶ最重要項目が緊急連絡先の確保です。私の会社では、外国人入居者には必ず以下の3カテゴリの緊急連絡先を確保しています。

国内親族または信頼関係者(必須・1名以上)

日本国内に居住する親族・友人・先輩同僚など、緊急時に駆け付けられる関係者を1名以上確保します。携帯電話番号・LINE ID・勤務先住所を取得し、写真付き身分証明書のコピーまで揃えるのが理想です。これがゼロのケースでは、入居審査は原則保留とし、他の連絡先確保策(雇用主担当者の二重化等)を検討します。

雇用主または登録支援機関の担当者(必須)

勤務先の人事担当者または登録支援機関の生活支援担当者の連絡先を必ず取得します。「本人と連絡が取れない」「保証会社の督促に応答がない」事態が発生した場合、雇用主経由で連絡を再確立できる体制を確保しておくことが、滞納の長期化を防ぐ最大のセーフティネットです。

通訳窓口またはアプリ(任意・推奨)

本人の日本語レベルがN3相当未満の場合、契約・更新・退去・トラブル発生時に通訳窓口が必要となります。2026年現在、ボイストラ・DeepL・Google翻訳の精度向上が著しく、日常会話レベルではアプリで十分対応可能です。法的説明や重要事項の通知では、雇用主・登録支援機関の担当者経由で母国語通訳を依頼するか、通訳派遣サービス(1時間5,000〜10,000円が相場)を利用します。

ステップ5:契約書類と多言語説明資料の準備

賃貸借契約書・重要事項説明書は日本語版を正本としつつ、要点を翻訳した補助資料を併用するのが実務的です。翻訳契約書を正本にすると、翻訳の精度に関する紛争リスクが発生するため、日本語正本+多言語補助が国土交通省ガイドラインの推奨形式です。

国土交通省「賃貸住宅標準契約書」の多言語版を活用

国土交通省は、賃貸住宅標準契約書の英語・中国語・韓国語・ベトナム語・ポルトガル語・スペイン語・タガログ語・インドネシア語版を無償公開しています。これらを「補助資料」として併用するだけで、契約締結時の説明品質が大幅に向上します。私の会社では、この多言語版に加え、自社で生活ルール(ゴミ・騒音・水回り・近隣挨拶)の補足資料を作成し、入居者の母国語版で渡しています。

IT重説の活用と通訳の同席

2022年5月から賃貸借契約のIT重説が完全解禁となり、ビデオ会議形式での重要事項説明が可能です。外国人入居の場合、雇用主・登録支援機関の担当者をIT重説に同席させ、現場通訳を依頼するのが効率的です。私の会社では、外国人入居の重要事項説明は原則IT重説で実施し、平均所要時間は1案件あたり50〜70分(通常の日本人案件より15〜20分長め)です。

ステップ6:入居後30日間の集中フォロー

外国人入居者のトラブル発生率は、入居後30日間で全期間の約60%が集中する傾向があります。ゴミ出しルール、騒音(深夜・早朝の生活音)、水回り(浴室の換気・水抜き・カビ対策)、近隣挨拶、駐輪・駐車ルールの5項目を、入居日・3日後・1週間後・1か月後の4回タッチポイントで周知・確認します。私の会社では、各タッチポイントで使うチェックリストを多言語で用意し、入居者の母国語版で渡しています。

特に効果が大きいのは、入居日当日のゴミ出しルール周知です。ゴミ収集日・分別方法・ゴミ出し場所を、入居者の母国語版チラシで渡し、近隣住民への挨拶も入居者と同行して実施します。これだけで近隣クレームの発生率を約70%削減できます。

ステップ7:更新・退去・母国帰国時の手続き整備

更新時は在留資格の有効期限を必ず確認し、賃貸契約期間と整合性を取ります。退去時は通常の日本人入居者と同等の立会いを実施しますが、母国帰国に伴う退去では、解約予告期間内に確実に手続きを終え、敷金精算・残置物処理・郵便物転送のフローを30日前から準備します。

母国帰国時の連絡途絶を防ぐコツは、退去予定の60日前時点で「帰国後の連絡先(母国の電話番号・SNSアカウント・国内代理人)」を取得することです。SNS(Facebook、LINE、WeChat、Zalo等)の連絡先を3つ以上取得しておくと、退去後に追加精算が発生しても連絡を再確立できます。私の会社では、過去3年で42世帯の外国人入居のうち14世帯が帰国退去となりましたが、追加精算が必要となった3世帯すべてで連絡を維持し、精算を完了できました。

差別禁止と「断り方」の法令対応

外国人入居の審査・断りには、住宅確保要配慮者居住支援法(2017年施行)・障害者差別解消法・人権擁護法案等の差別禁止規範が関わります。「外国人だから」という属性のみを理由に入居を断ることは、差別的取扱いに該当するリスクが高く、近年は法務省人権擁護機関への申立て事例も増加しています。

断る根拠としては、(1)在留期間が賃貸契約期間より大幅に短く、更新不透明、(2)収入が賃料の2.5倍以下で保証会社4社すべてで否決、(3)国内連絡先が一切確保できない、(4)雇用主・登録支援機関の関与が確認できない、といった客観的・具体的な事実に基づく不適格事由に限定するのが安全です。「外国人は受け入れない」という総括的方針ではなく、「在留期間が契約期間に対し短すぎる」「保証会社で審査が通らない」といった個別事案単位の判断とし、その判定根拠を文書化しておきます。

よくある質問 5問と現場の回答

Q1. オーナーが「外国人は絶対NG」と言う場合、管理会社としてどう対応すべきですか?

A. オーナーの方針自体は尊重しつつ、長期的な空室リスクと地域の外国人住民比率を数字で説明するアプローチが現実的です。具体的には、(1)地域の外国人住民比率と過去5年の推移、(2)空室期間が3か月を超えた場合の機会損失額、(3)保証会社・緊急連絡先・登録支援機関を整えた場合のリスクコントロール度合い、を一覧で提示します。多くのオーナーは「リスクが見えないこと」が不安の本質であり、可視化と対応策のパッケージ提示で方針転換に応じる方が約半数います。

Q2. 在留期間が残り1年未満の入居申込はどう判断すべきですか?

A. 残在留期間が1年未満で、賃貸契約期間が2年の場合、入居者は契約途中で在留資格更新申請を行う必要があります。判断材料は、(1)更新申請の見込み(雇用主の意向、雇用契約期間、過去の更新実績)、(2)保証会社の判定、(3)更新不認可となった場合の退去フロー、の3点です。私の会社では、雇用主からの「更新支援に責任を持つ」旨の書面合意を取得した上で、在留期間残6か月以上であれば原則受入、6か月未満は個別判定とするルールにしています。

Q3. 留学生本人の収入だけでは保証会社が通らない場合の対応は?

A. 留学生は原則就労制限があり、本人収入のみでは保証会社の審査通過は困難なケースが多いです。打開策は、(1)親族(本国の両親等)の連帯保証契約、(2)親族からの送金実績の証明、(3)奨学金受給証明書、(4)銀行残高証明書(本人または親族名義で年間賃料相当額以上)、を組み合わせて保証会社に提出することです。フォーシーズ・グローバルトラストの2社は、これらの補完資料を加味した審査に応じる実績が豊富で、留学生賃貸の第一審査依頼先として有効です。

Q4. 入居後にゴミ・騒音クレームが発生した場合、どう対応すべきですか?

A. クレーム受領後48時間以内に、入居者本人と雇用主担当者の両方に連絡し、状況確認と改善依頼を行います。本人への連絡は母国語通訳を介して具体的に「いつ・どこで・何が問題か」を伝え、「日本のルール」ではなく「この物件・このエリアでの具体的ルール」として説明します。私の会社では、クレーム発生時に必ず雇用主担当者を同席させた現地面談を実施し、改善誓約書(多言語版)に署名いただく運用にしています。これにより、再発率は約85%削減できています。

Q5. 母国帰国に伴う急な退去で、敷金精算や残置物処理に問題が出ないようにする工夫は?

A. 退去予定の60日前時点で、(1)帰国後の連絡先(母国電話番号・SNSアカウント3つ以上・国内代理人)、(2)残置物の処分方針(全廃棄/特定品の発送/友人への譲渡)、(3)敷金精算口座(国内銀行口座を維持するか、雇用主経由で精算するか)、を確認します。残置物処分の費用負担と方法は契約書の特約条項で事前に取り決め、退去時の追加合意書(多言語版)に署名いただきます。私の会社では、帰国退去14世帯のうち追加精算が発生した3件すべてで連絡を維持できており、平均精算所要日数は18日(国内退去の平均22日と同等水準)です。

まとめ — 外国人入居受入は「仕組み化できれば日本人より安定する」

外国人入居の受入は、適切な仕組みを整えれば日本人入居者より滞納率が低く、長期入居の安定性が高いセグメントです。育成就労制度の施行が迫る2026年は、中小不動産会社が外国人賃貸の受入体制を整える最後のタイミングと言えます

本記事で示した実務7ステップ(在留資格確認・収入確認・保証会社選定・緊急連絡先確保・契約書類整備・入居後フォロー・更新退去対応)を社内マニュアル化し、3〜5世帯の成功体験を積めば、外国人入居は「怖い領域」ではなく「成長セグメント」に変わります。私の会社では42世帯の受入で滞納率を全体平均の半分以下に抑え、年間賃料収入を約3,200万円底上げできました。

本記事を社内マニュアルの叩き台として活用し、外国人入居受入を「断る」から「仕組みで受け入れる」運用に切り替えていただければ幸いです。ULSAPO の賃貸管理機能では、入居審査時の在留資格確認チェックリスト、保証会社別の審査依頼テンプレート、多言語入居者管理データベース、緊急連絡先の二重化管理など、外国人入居の実務を仕組み化するための機能を提供しています。機能紹介ページもぜひご覧ください。


著者から一言:外国人入居の受入は、社内の経験者がいないと「最初の1件」のハードルが特に高い領域です。私自身、2023年に最初の外国人入居受入を判断する時、保証会社の選定・在留資格の確認・契約書の多言語対応・退去時の対応で社内に経験者ゼロという状況からのスタートでした。

最初の5世帯は社長である私が直接担当者と並走し、判断ポイントを言語化していきました。6世帯目以降は新人担当者でも対応できるよう、判定フローと連絡フローを社内マニュアル化。3年後の現在、外国人入居受入は完全に標準業務として運用されています。

外国人入居の受入を仕組み化したい中小不動産会社の社長・実務者の方は、本記事をたたき台にして、まず保証会社4社の比較と緊急連絡先確保フローの整備から着手してみてください。最初の3世帯の成功体験で、社内の不安は驚くほど早く消えます。

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